Another World @推奨BGM: 第11話.『偉大なる魔術師』 「……それで、貴女がたをここに匿って欲しい、と。そういうことですか?」 「そうそうそぉ! 話が分かる人って嬉しい!」 「コラコラ、リリ。失礼だよ。ごめんねー、不躾で。」 「私達は別に問題ありませんよ。ただ、戦える人はできるだけ、仕事に参加して下さると嬉しいのですが。」  玄関のドアが開き、見知らぬ男女が4人も入ってきたのだった。  ミュラは高ぶる感情を抑え、冷静に話を聞いていた。  ……どうやら、彼らは自称「難民」らしい。  今まで、壊滅した平原エリアに隠れ住んでいたのだが、今日とうとう食糧が底を尽き、  命からがらここまで移動してきたのだという。  彼らはレジスタンスに所属しないAWの「一般人」で、戦いは得意ではないらしい。  ゴッディアの攻撃から身を守るため、レジスタンスの力を求めてやってきたというのだ。  ミュラはその申し出をとりあえず承諾した。  挫けそうになる心を誤魔化すには、丁度いいと思ったのだ。  ――とりあえず、建物内にいるメンバーは会議室に集まり、彼ら4人の「難民」の紹介が行われた。  ミュラの他、Wars、ピーター、ベイトが室内に。  ノアは一人にしてほしいらしく、廊下にいる。  まず先陣を切って、4人の内で一番幼く見える、黒髪の少女がおずおずと前に出る。 「あたしはリリトットです。急なお願いを聞いてくれてありがとぉ。非力で役立たずだけど、精一杯頑張るね!」  そう言って、元気一杯にお辞儀をする。その時にチラリと、背中に杖が見えた。  ピーターがそれとなく訊く。 「き、きみ、杖を使えるの。」 「うん。……あ、でも、魔法は使えないの。ぽこぽこ殴るだけで、杖術とも言い難いかな。」 「へぇ。子供なのに、すごいんだね。」  それを聞いて、リリトットは不機嫌な表情を浮かべ頬を膨らませる。 「……リリは、子供じゃないもん。背は低いけど、大人だもん。」 「へ、あ、あぁゴメン。」  ピーターは恐縮し、謝る。でもそれは仕方のない事だろう。  身長だけでなく、喋り方や仕草からは小学生を想起させるのだから。  次に名乗り出たのは、リリトットの後ろにいた褐色の男。銀の長髪を腰まで伸ばしている。 「漸(ぜん)、っていう。この4人の中では唯一、化け物と対等に戦えるんでね。オレの力、よろしく使ってくれていいよ。」  その名乗りを聞き、ベイトが興味を持ったようだ。 「ほぉ……。武器は何使うんだ?」 「オレの相棒は、コイツらだよ。」  漸は腰に提げていたホルスターから2丁の銃を取り出す。手付きからして、本当に扱い慣れているようだ。 「なるほどねぇ……。腕前、楽しみにしておくぜ。」  ベイトは挑発するように言う。漸はニッと歯を見せて笑い、それに答えた。  続いて出たのは青っぽい服を着た青年。……気のせいか、床から少し浮いてるように見える。 「ボクはホーエー。一応、魔術師の端くれやってます。……といっても、水魔法くらいだけど。」  その横にいる男も、続いて出る。 「あ、ギニーって呼んでね。僕らひ弱な一般人。大したことはできないんだよ。」 「そう。……雑用ならいくらでもやるよ。でも、その代わり、ボクらの安全を確保してほしいんだ。」 「お願いね、レジスタンスのみなさん!」  4人の難民は各々に頭を下げる。  ミュラは続けて、拠点についての説明、仕事の割り振り、禁忌行為についての説明に入った。  それを遠目で見ながら、部屋の隅でベイトとWarsが小声で話し合う。 「……どう思う、あの4人。」 「さぁねぇ。漸って奴以外、本当に無力みたいだぜ?」 「力の隠し方が上手いのかもしれない。何にしても、警戒はするべきじゃね。」 「それは同感だな。急に現れて匿ってぇ、なんて怪しさムンムンだ。」 「……個別に見張ろう。……くれぐれも、油断はないように。」  2人が警戒するのも無理はない。  怪しき者を殺すのは簡単だ。  しかし、それではゴッディアとなんら変わりなくなってしまう。  住民とこの世界を護るのが目的のレジスタンス。  護るということは、難しいことなのだ。 ―――  夜闇の中に浮かぶ結界壁に、優しい灯が揺らぐ。  この幻想的な部屋は、拠点内で起こっていることなど何も知らずに佇んでいる。  中に居る魔術師と少女は、魔法について語り合いながら魔術書を読み合っていた。  花蓮が魔術書を選んでいる間、ゼヴルトは椅子に座り何かの本を読んでいた。  その椅子も魔術で作り出したもの。彼が指を鳴らせば、力を加えずに操作できるのだ。  花蓮はゼヴルトの読んでいる本が気になり、それとなーく表紙を覗いてみる。 「なんですか、これ。『星の王子とグラサン少女』……?」 「人の本を覗き見るな。……で、何にするか決まったか?」 「なんですか、『グラサン少女シリーズ』って。」 「いいから早く決めろ。炎熱操作か肉体強化か、それとも読心術か。」  ゼヴルトが読んでいたのは、少し前に流行があったライトノベル。  戦乱の影響で作者が死に、永遠に完結することのなくなったグラサン少女シリーズ。  なんというか、ゼヴルトの読書の幅は広い。 「まぁ……焦る事はない。夜が明けるまで、時間はたっぷりあるからな。  後悔しないように選ぶがいい。魔術の修行は大変だぞ……フッ。」 「はぁー……もうこんな時間なんですね。日付が変わってしまいます。」  花蓮は、腕の時計を見て驚く。  思ったより長くここにいてしまったと気付いたからだ。 「そういえば……ゼヴルトさん。」 「なんだ?」 「戻らないんですか? 建物には。」 「…………。あぁ。」  濁った返事。何か事情があるのかと、花蓮は察した。 「私はこうして、独りでいたいのだ。何かあればすぐに行く。」 「……そうですか。」  彼と言葉を交わした花蓮には、少しだけ、察しがついていた。  ゼヴルトは、自らを有能な魔術師だと気取っている。  それに関しては、花蓮も疑ってはいない。まさに、理想の魔術師像なのだ。  しかし、その裏にどれだけの努力があるか、想像した者はどれだけいるだろう。  この結界でできた部屋には、至る所に本が置いてある。  魔術書、辞書。ライトノベルは置いておくとしても、まるで知識の宝庫だ。  そしてそれを、ゼヴルトは時間を惜しんで読んでいる。  ゼヴルトは誇り高き男。  だから、努力している姿を誰かに見せたくはないのだ。  勿論、それは花蓮に対しても同じ。  余裕のある態度で魔法を振舞っているが、治療のスペシャリストである花蓮は気付いていた。  ゼヴルトは、体のあちらこちらに生じた傷を、黒いマントで隠しているのだ。  ――椅子に座り、くつろぎながらもマントを脱がないのが、その証拠。  傷自体は大したことないのだろうと推定したが、治療師の義務として、しっかり治さないといけないと花蓮は思った。  でも、言い出すことはできなかった。  彼の誇りを傷付けたくなかったから。  だから同時に、ここへ来てしまって悪かったな、とも思っていた。 「……決めました、ゼヴルトさん。これにします。」 「ん? ……いいのか、これで。」 「はい。私は人を傷付けたく、ないのです。」 「……そんな甘いこと言ってられないと思うがな。」 「いいんです。……ゼヴルトさん、ありがとうございました。」 「別に。習得できるかどうかは、君次第だからな。」  ふと、花蓮は時計を確認する。  23時59分。明日が目の前まで迫ってきていた。 「お邪魔しました。ゆっくり、体を休めて下さいね。」 「あぁ。……では、明日に、また。」  花蓮が出て行こうとするので、ゼヴルトは結界を解除し、外への穴を作ろうとする。  親指と中指を合わせ、弾くだけ。  パチ……  音は弱々しく、結界は動かぬまま。  ――ゼヴルトが、指を鳴らすのを躊躇ったからだ。 「外に出るな。危険だ。」 「え……。」  ゼヴルトの視線を、花蓮は追う。  その先には……他の皆がいるレジスタンスの、拠点。  荒野の真っ只中の建物は、空から降り注ぐ光で、眩しいほどに輝いていた。  今は、真夜中だというのに! 「……っ!?」  花蓮は目を閉じる。閃光の強さに目が耐えられない。  そして、耳で聞いた。  ドドドドドゴオオオオォォォォォン!!  ――爆音を、確かに聞いた!  閃光が徐々に弱まり、目を開ける。  拠点は相変わらず光に包まれていて、真夜中だというのに明るすぎるほど。 「あ、ああ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」  レジスタンスの拠点が、皆が居るはずの建物がっ、  赤い光を撒き散らしながら、轟々と燃え盛っているっ!!   ――― 「ミュラちゃん! 荷物はどうだ!?」 「既に火が回っています! これ以上は持ち出せません!」 「難民達は避難完了した! 出るぞ!」 「ベイト、ピーターはどこだ!?」 「……ここに、いるよ……ケホッ。煙が、すごい……。」 「くそっ、ドアが歪んでやがる……面倒くせぇ、吹き飛ばすぞ! 離れてろ!」  炎に包まれた拠点内。  難民達を先に避難させ、レジスタンスのメンバーは物資の確保に努めていた。  ミュラは倉庫内の荷物をありったけ持ち出し、それをノア、ベイトと分担して運び出す。  残り半分の荷物を残し、火の勢いが強まる。ドアも塞がってしまった為、これ以上は危険だということになった。  ズガァン!  ベイトは爆薬を放ち、ドアと瓦礫を吹き飛ばす。  外への突破口が開いた。 「走れ! ここはもう駄目だ!」  天井が軋み、板が剥がれ落ちてくる。  今までゴッディアからの攻撃に耐えてきた拠点も、終わりの時を向かえるのだ。  全員が、外へ向かって走る。ここを出れば、ひとまず安心できる。  そう、油断した時。  ビュオオォォォッ!  開いた出口から風が吹き込み、火の勢いが一気に強まった。  そしてとうとう壁と天井が崩壊し、落ちる瓦礫が5人を襲う! 「う、うわぁぁぁっ!」  その瓦礫がピーターを飲み込み、降り積もる。 「ピーターさん! ……あっ!」  ゴスッ!  足を止めたミュラは頭に瓦礫の直撃を食らい、倒れる。  そして更に、容赦なく降り注ぐ瓦礫! 「ミュラっ! おいっ、何やってんだ!」 「くっ……た、盾が、引っかかって……うあああっ!」  ピーターを襲う炎熱に呻き声が上がる。  金属製の盾を背負ったまま倒れたので、瓦礫の熱が盾に伝わり、その熱がピーターの身体を灼く。  ベイトとWarsは外に脱出したが、ノアは引き返し2人を救おうと瓦礫を砕く。  しかし、その行動に対して慈悲はなく、同じようにノアも瓦礫の山に埋もれていくだけだった。 「くぅ……駄目だ、駄目だ……、死なせるか、死なせてたまるか……!」  ミュラの足を押し潰す瓦礫を素手で持ち上げるノア。  熱で頭は朦朧とし、煙でもう目は見えない。 「これ以上、俺の目の前で……犠牲は出させない……っ!」  ノアは瓦礫を振り払い、ミュラとピーターを救い出す。 「無事か……?」 「はい。ありがとう、ノアさん……。」  目は見えないが、その声を聞いて安心する。 「早く、出るぞ……出口は、どこだ?」  ミュラとピーターは肩を貸し、ノアと共に外へ向かって歩く。  ガタン。ガラガラガラッ!  再び凄まじい音が響く。  ミュラは頭上を見上げ……絶句する。  さっきのより更に大きな瓦礫が、襲い掛かってきたのだ。  ズッシュゥゥゥン……!  重い音。  3人が、瓦礫の下敷きになった音。  完全に身動きを封じられ、もう――覚悟を決める事しかできない。 「すまない……。俺には、やっぱり無理だったか……。」  ノアは、弱々しく声を振り絞る。 「……ノアさん……ごめんなさい…… あなたまで、巻き込んでしまった……ケフッ、ゲホゲホッ!」 「喋らなくて、いい……俺は、最悪だ……ゲホッ。誰も……ゲホッゲホゲホ、守れない……ガハッ! ……うっ……。」 「ぼ、僕なんかに、謝らないで、下さい……ケホケホケホッ、ケホッ! 喉が……痛い……。」  四方を炎に囲まれ、身体を瓦礫に封じられ、煙が肺を犯し、喉を焼く。  徐々に、喋る事すらできなくなっていく……。 「…………こんな……ところで……。…………。」  3人の意識は、暗く、暗く、落ちてゆく……。  ググ……ガシャッ。  瓦礫が動く音がした。 「まだ生きてるか? 喜べ、助けに来てやったぞ!」  3人は目を開けられない為、その人物を声だけで判断する。  ――ゼヴルト、だった。  ゼヴルトが、左脇に魔術書を抱えながら、右腕一本で瓦礫を持ち上げている。 「この私が、わざわざ肉体強化魔法を使うことになるとは……感謝して欲しいものだ。  さぁ今のうちだ。歩けるか、君たち?」  ノアたちの喉は焼け、返事を返すことはできない。  だが、力一杯体を起こすことでそれに答える。  それを見たゼヴルトは難しい表情を浮かべ、外にいる人間に向かって叫ぶ。 「やはり、キツいか……? おい、誰か来てくれ! 手伝いたまえ、私達を!」  その声に反応し、ベイトと漸が炎を掻き分け、飛び込んできた。 「やけに遅いと思ったら、何だよこりゃあ。大丈夫か、ミュラちゃん&テメェら!?」 「オレの肩を貸そう。しっかり捕まってろよ……!」  ベイトがミュラを、漸がノアを、そしてゼヴルトがピーターを支え、出口を目指す。  ゼヴルトは脇に抱えた魔術書を見て、苦い笑いを零す。  魔道書に火が移り、端から徐々に灰になっていく。  ――この本が焼け落ちた瞬間、強化した力も消えてしまうのだ。  一歩、一歩と歩みを進めていく。  もうすぐだ、もうすぐ外に出る……!  先頭のベイトとミュラが脱出する。  外で待機していた難民達と花蓮が、すぐさま治療にあたる。  花蓮の手にかかれば火傷もすぐに治せるだろうと、ゼヴルトは安心した。  続いて、漸とノアが脱出したのが見える。  燃え盛る建物から少し離れた場所で、治療が行われていた。  ――花蓮はミュラの火傷を治療しながら、自らを責めていた。  こんなことになるなら、ゼヴルトの傷をしっかり治しておけば良かった、と。  いくら肉体強化をしているからとはいえ、体力が無いのは隠すことができない……。  だから、祈る。無事に脱出してくれることを、ひたすら祈る。  ゼヴルトとピーターは、出口まで来ていた。  焼け崩れ、狭くなった玄関。ここを潜り抜ければ、外に出ることができる!  安堵したその時、ゼヴルトの全身に痛みが走る。 「ぐぅ……あ……私としたことが……!」  ゼヴルトの左脇に抱えていた魔術書が、煤と化した瞬間だった。  肉体強化の魔力を失い、ゼヴルトにピーターの体重が一気に圧し掛かる。 「ううぅぅぅ……こ……この……!」  元々、細腕のゼヴルトは当然押し潰される。  ピーターの体重は特に重いわけではなかったが、盾の重みが予想以上なのだ。  右肩で支えているピーターは意識を失っているようで、どれほど声をかけても動いてはくれない。  ピーターの全体重と盾の重量が、純粋に圧し掛かってゆく。  その負担に耐え切れず、隠していた傷が悲鳴を上げる。  ゼヴルトはもう、一歩も前へ進めなかった。  パチパチ、ゴウゴウと音を立てる炎は、体力を徐々に奪ってゆく。  魔術の使えない男は魔術師に非ず。  ……ゼヴルトは、全てを悟り、回顧する。  私は、今まで何の為に努力を重ねてきたのか。  生まれつき体が弱く、一人では何もできなかった、幼い頃。  ――皆に負けない力をつけたい。皆を見下せるようになりたい。と、誓った……遠い記憶。  独学でここまで上り詰めた。古今東西数々の本を読み漁り、知識を叩き込んだ。  無力だった私は……ゴッディアの攻撃に対抗できるほどまでになったのに。  少し、勘違いしていたようだな。  魔術書……たった一冊の本が無いだけで、昔の無力な私に逆戻りしている。  必死で身に付けたと思ったのに、何も身に付いていなかった。  再び、爆音が轟く。  炎の勢いはもうクライマックスだ。  すぐさま、壁と天井の破片が私とピーターを襲うだろう。 「すまなかったな、ピーター。」  右肩でぐったりしている仲間に、声をかける。  彼は私を恨んでいるだろうか。当然だ。自覚があるくらい、見下げ果ててきたのだから。  ……。  私が何の為に努力をしてきたのか?  その答えは、ずっと目の前にあったじゃないか。  ゼヴルトのか細い腕に、力が集中する。  意識を失ったままのピーターの体を起こし、そして、出口に向かって、突き飛ばす。  これを正に「火事場の馬鹿力」というのだろう。  ピーターの体は思ったよりも強く弾き出され、炎を潜り抜け、煙の向こうに見えなくなる。  それと同時に、ゼヴルトの体がビキビキと悲鳴を上げる。  体はもう死んだようなものだ。でも、ゼヴルトは、意識まで焼けてしまう前に、……笑う。 「ハッハッハッハ……ハァッハッハッハッハッ!!」  力の篭った、傲慢な笑い声が響いた。  でも、それは一瞬で、炎に掻き消されてしまった。 ――― 「駄目だ、崩れるよッ! 離れて、早く!」 「うおぉぉぉぉっ! しっかりしろ、ピーター!」  ホーエーの水魔法による必死の消火活動も虚しく、建物は限界を迎える。  ミシミシという嫌な音。  ベイトと漸は、崩れ落ちた玄関から顔を出したピーターを引っ張り出し、遠くへ逃げるように運び出す。  ミシミシミシ……ガラガラガラッ、ズゥゥゥゥン……  そして、拠点は終わりの刻を迎えた。  ミュラの意識が戻らず、蘇生に徹していた花蓮は、その音に青ざめる。 「ゼヴルトさんは? ……ゼヴルトさんは、どうしました? ……あ……ぁ……。」  もう、治療を怠った自らを、責めるしかない。  まだ勢いの強い炎が、闇の中で煌々と光る。  見渡す限り、一面の瓦礫。  炎が全てを飲み込み、どこが玄関だか食堂だか倉庫だか壁だか天井だかも、誰にも分からない。  ――時間が経ち、炎が消えても、ゼヴルトが現れることはなかった。  その屍すら、見当たらなかった。  魔術師は、最期まで、孤高だった。    12話へ続く