Another World @作業用BGM紹介:http://www.youtube.com/watch?v=L8TBm4m_NMI(うみねこのなく頃により、golden slaughter) 第38話.『9発の閃光』  4月22日 23:50 ―――  ティアは大会議室に篭り、今後の事を考えている。  目を瞑って腕を組み、一人でうんうん頷きながら思索を巡らすその姿に、エガルもリスナも介入できず様子を見守っていた。  ティアの横に置かれている鞄には寝具と日用品が詰め込まれており、この部屋で一晩を過ごすことは織り込み済みのようだ。  花蓮は小会議室に負傷者を集め、治療士としての仕事に全力を注いでいた。  大きな怪我を負った者には、治療した後も口酸っぱくあれこれと指示し、体調管理に抜け目は無い。  もはや小会議室は即席の診療所のようになっており、彼女も今夜は自室に戻る気は無いようだ。  テイクはノクスの遺体が安置されている部屋に赴き、祈りを捧げる。  かつて牧師だった――いや今も尚、真なる神に仕える意志を持つテイク。  せめて魂が安らぐようにと鎮魂の言葉を残し、自室へと戻る通路の途中であった。  ホーエーはピーターを引き連れ、自室に閉じ篭る。  緊急事態により、一人きりでは不安な夜を、二人で共に過ごす。  その傾向が更に極端なのが漸、そしてリリトット。  漸はリリトットの部屋に押しかけるようにして上がり込み、扉に堅く鍵を掛ける。  夜が明けるまで、他の仲間にすら会わないつもりなのだろうか。  斬燕とクルミも同室し、明るい話をして過ごす。  クルミはお姉さんぶり、斬燕が安心して寝静まるまで側にいてあげるようだ。  ネコはクルミの中で、どうでもいいと思いながら眠っている、のかもしれない。  スレインは機械室で機器の点検、そしてブザーの修理作業。  裏切り者の手によって、悔しくも火器を駄目にされた失態。  それを挽回するかの如く、不眠で働く気概十分のようだ。  エガルとリスナは、物資の確保に追われている。  ノクスが担当していた部分のフォローの他、保管庫が占領されている現状で如何に不満の出ない生活を維持できるのか。  ティアから下された命令はまだ続行している。湖底基地のホストとして、雑務を積極的に処理することを。  今はそれを忠実に遂行するのみ。アサメが活路を開く、その時まで。  アサメは孤独に、エレベーターの修理をする。  使えそうなワイヤーロープに板を括り、手動で上下することのできる簡易エレベーターを作る。  基地の構造が頭にインプットされているアサメの力でなら、それが十分可能であった。  次の昼までには、必ず。  ノアとベイトは、大会議室にいた。  ミュラを間に挟み、気まずそうな雰囲気を漂わせて椅子に腰掛け、睨み合う。  裏切り者の存在が公になったことにより、互いにミュラを懐に引き入れようとした事が露わになったのだ。 「……ま、俺にはてめぇが裏切り者だとは、思えねぇがよ。」 「それは俺も同感だが。」 「あ、あの……。」  ミュラはもじもじと腿の間で手を握る。  互いを疑っている訳でも無いのに、この2人の気まずい仲は一体何なんだろう。 「覚悟はあったのか? ……生易しいてめぇが仲間を手に掛ける覚悟がよ。」 「ああ。」  最初に吹っ掛けたのはベイト。しかし、ノアは両足の硬直した患部を揉み解しながら、返答した。 「前に荒野の拠点で、あんたに言われた事……はっきりと覚えてる。俺の実力が近衛兵に劣るって事も身に染みた。  ……だからこそ俺は、もう傷付けたく無い。今度こそ、ミュラを守ってみせる。」 「口だけじゃなんとでも言えるよな。……まだ間違ってんだよ、てめぇは。」  ベイトが立ち上がり、ノアも目線で追う。  その時に、会議室の壁に掛かっている時計の針が見えた。 「ミュラちゃんを守りたいのはてめぇだけじゃねえんだ。……ミュラちゃんや、花蓮ちゃんと長く過ごしてきたのは、お前じゃなくて俺。  荒野からずっとな。俺にとっても、ミュラちゃんは深い恩もある、かけがえのない存在なんだよ。  ……てめぇがどうしようと関係ねぇ。俺もミュラちゃんを、仲間を守る理由があんだ。」  ベイトが胸を張り、ミュラは恥ずかしさに俯く。  女の子相手に積極的なのはいいが、本人の前で宣言されるとなると本当に恥ずかしいものだ。  ミュラは、自分が守られなくてはならないほどに無力なのかと情けなくなる。  その一方で、2人の男性にここまで言わせてしまった事に、嬉しさと――胸が痛くなるほどの哀しさを覚えた。 「ベイト。……もうすぐ、0時だ。」 「ああ。分かってら。」  ベイトは振り返って時計を確認することも無く、歯軋りをする。 「……俺達にとって絶対に忘れられない時間だよ。」 「審判……の時間。」  ミュラも呟く。果たして今夜は何が起こるのか。不安になりつつ、同室の奥で考え事をしているティアを見る。  トリードの審判についての情報は、既に仲間全員に共有させている。  その上でティアはこう言った。 「大丈夫だ。ここは地下だから、砲撃が飛んできても大した被害は出ない。  湖の水面は大変な事になるかもしれないけど、外に出なければ問題無いからな。」  ……と。自信満々の宣言に、ほとんどの者は安心したようだった。  確かに、この鉄壁を誇る湖底基地には、トリードの炎の魔砲は効果が薄いだろう。  しかしミュラは胸騒ぎを感じた。それ故、この時間まで起きているのだ。  今夜、外部からの侵入者がやってきた異例の事態。  それに留まらず、更に何か恐ろしいことが起こる、そんな予感がする――。 ―――  4月22日 23:59 ―――  近衛兵デュオが、玉座に座る。  ふてぶてしく足を組み、まるで楽しい見世物を鑑賞するかのように笑い、両手を広げる。  その両手の上に、徐々にエネルギーが溜まっていく……。 「地下に潜れば安心だとでも思ったのかーねェ。ま、反則スレスレだけどよ……そっちの座標は割れてんだ。残念だったなァ。」  デュオは悪意を込めた高笑いをする。仮面の下からでも分かるほどに、邪悪な表情を剥き出しにする。  もはや神に仕える近衛兵とは思えない態度。  これより行うものは罪人を裁く審判だと、表向きには広まっている。だがデュオは、その厳粛なる儀式を嘲笑う。  彼がトリードを排除しトップに立ったのは、彼の欲望そのものを満たす為だけ。  誰も咎める事は無い、無秩序にして、無法の――“裁き”。 「まあ、執行初日ってことで勘弁な。」  オル・ドヴォールがレジスタンス湖底基地に侵入した事で、デュオだけでなく近衛兵全員が把握していた。  ――湖底基地の存在する、座標を。  デュオの両手の上に集まったエネルギーは白く輝き、火花を放つ。  それをデュオは頭上に掲げ、更に力を圧縮する。  それと同時に、デュオが居る玉座の間の虚空に、黒い穴が出現する。  それは転移の魔術の一種で、使用者が望む場所の空間と空間を一時的に繋ぐ事ができるもの。  穴の大きさを、人が通れる程のサイズにまで広げる事はとても困難だが、今のデュオにとっては拳大のサイズでも十分だった。  虚空に広がった黒い転移の穴を見て、デュオは宣言する――残酷なる審判の開始を。 「さァ、舞い踊れ。叫び狂え! 怖がることは無い、こいつは神も喜ぶ極上のショーだ!  運が悪いやつから順番に、神さんのトコにランデブーしなァ!」  デュオの審判とトリードの審判は、理念だけでなく形態も異なる。  トリードの審判が炎の魔術砲撃1発のみだったのに対し、デュオの審判は「運」に頼る部分が強い。  それが彼の扱う魔術の姿であり、彼のプライドそのものであった。  玉座の前、床に無造作に転がる3つのサイコロが示す数の合計は、9。  デュオの両手に集まる光のエネルギーが収束したと思った直後、それは眩しい閃光と姿を変え、デュオの手を離れる。  そして、その閃光が9本に分かれ――転移の穴に吸い込まれていった。  デュオの設定した座標の先へと……! ―――  4月23日 0:00 ―――  日付が変わった。  その事に注意を向けていたのは基地内でも一部の者だった。  何故なら、湖底基地に居る限り、0時の審判にて危険な思いをする事は無いと信じていたのだから。  テイクは薄暗い基地の通路を歩き、自室に向かっていた。  自室までは一本道で、突き当たりの壁がぼやけて見えるほどの長い長い通路を歩く。  もうすぐ、自室のドアが右手に見える地点で、テイクは気付いた。  向こうからこちらへ迫り来る、薄暗い通路を照らす光の姿――。  なんだあれ?  テイクは目を凝らしてそれを見る。  次の瞬間、高い破裂音がして、テイクの身体は――弾き飛ばされた。  両足が床から離れ、後方に仰け反り、ガツンと頭を打つ。 「いてて……何だ?」  テイクは寝ぼけた感覚のまま頭をさする。  目にした光の正体は何なのか分からぬまま、何が起こっているのかが分からぬまま。  だが十秒ほど経ち、テイクは自身の腹に違和感を覚える。  右の腹部。そこを右手で軽く触ると、違和感が激痛となってテイクの意識を覚醒させた。  一瞬の事で気付くのに遅れた、腹部からの出血――。  何か鋭いものが貫通したかの如く、法衣ごと身体が傷付き、激しく出血している。  テイクは傷口を押さえ、非常階段へ向かおうと立ち上がる。  と、とにかく、花蓮さんのところへ――皆のところへ!  2,3歩歩き、テイクはもう一度さっきの光を目にした。  その光は蛇のような閃光で、狭い通路内を縦横無尽に駆け回っていた。  あの光の正体こそ分からなかったが、何か危険なものであることは間違いが無かった。  今度は先程と違い、閃光は一直線にテイクに向かっては来ていない。  しかしテイクが視認できる範囲に、2人ほど他の人影があった。  それは、ホーエーがピーターを伴い、ドアを開けて通路に飛び出してきた様子。  その2人に向かって、蛇の胴体、鋭い鞭のようにしなる閃光の矢が、牙を向ける――。 「ホーエーさん、ピーターさん!!」  咄嗟に名前を叫ぶことしかできなかった。  テイクは風切りの十字架を取り出したが、それで何ができるものか。  ホーエーとピーターが驚き、テイクの方を向く。だが、その逆方向から危険は迫り来る!  ドカッ、ドバッ!  閃光が2回、弾けた。  一秒にも満たないその間に、閃光はホーエーの太股、ピーターの肩を貫き、壁に吸い込まれて霧散した。  悲鳴を上げる2人。テイクが駆け寄る。  大丈夫ですかと声をかけ、2人の傷の様子を見る。  ホーエーの太股の出血は酷かったが、ピーターの肩に視線を移した際、テイクは更に息を呑んだ。  ピーターが震える泣き声を上げる。  彼の左腕は、肩から下が真っ赤に染まり――皮膚が破壊され、皮一枚で繋がっているような状態だった。 「ピーター! ピーター、腕が……!」 「うわぁぁ、ぅ、うぅ、ぅわあああっ!!」  ホーエーが慌て、ピーターは更に取り乱す。  突然の、左腕が無くなる一歩手前の惨状。まともに目にしてしまっては、混乱で息もできない。  テイクは自身の腹部の傷の痛みを堪え、よろよろと歩き出す。  ピーターを優先的に治療士の元へ運ばなくてはならない。  だがテイクと、足を負傷しているホーエーだけでは人手が足りない。 「誰か! 誰か来て下さい!!」  テイクは声を振り絞り、助けを求める。誰でもいい、誰か手を貸して欲しい。  その時、その声に応えるかの如く――3本目の閃光が通路の曲がり角から出現した。  そしてそれは無情にも、よろめきながら通路を駆けるテイクの胸に向かって飛来した……!  テイクは覚悟し、咄嗟に目を瞑る。  バリッ、と耳を刺激する音と、激しい光を感じた。しかしそれまでで、テイクには何の怪我も無かった。  テイクの周囲には、ドーム状の防御膜が張られていた。  一部にヒビが入っており、それにより閃光の破壊力を相殺できたようだ。  間違いなくピーターの、バリアスペルによるものだった。 「ピーター……?」  ホーエーはピーターを肩で支えたまま、驚いてピーターを見る。  ピーターは左肩の激痛にも負けじと右腕を上げ、テイクを守ったようだ。  やがてピーターは意識を失い、ガクリと崩れ落ちる。  それに伴い、テイク周辺に張られたバリアも消滅した。 「……テイクさん、頼むよ!」 「は、はい!」  急ぎ、負傷者を運ばなければならない。  テイクが一目散に駆け付けた最初の部屋は、斬燕のものだった。 「斬燕君、……っ!?」  テイクが危機を知らせようとドアを開けた瞬間、そこにも異常事態が起こっていた事に気付く。  室内に居たのは、背中を真っ赤に染めてうつ伏せに倒れ付す小柄な少女と、彼女の身体を泣きながら揺する斬燕。 「ク、クルミが……光が出てきて、僕を庇って、……返事、しないんだ……。」  強がりながらも溢れる涙が止まらず、何度も何度もクルミの名を呼ぶ斬燕。  すると突然、クルミの身体が変化した。ネコと“入れ替わった”のだ。 「……何だ何だ、あー、眠っ。クルミに何かあったの。返事が無いけど。」  ネコは目を擦る。今の今まで眠っていたらしい。  ネコは斬燕の顔とテイクの腹の出血を見て、事態を飲み込もうとする。 「ネコさん、来て下さい……お願いします!」 「何? 何が起こってんの……?」  テイク自身、今の今まで何が起こっているか分からなかったが、部屋内の時計を見ることによりようやく理解する。  そして情報を統合し、判明した事実を――テイクは答える。 「“審判”です。……0時の。」 「……待てよ。ティアは安全だ、って言ってなかったっけ?」 「ええ。……トリードの審判なら、確かに。」  ゴッディアの事情に通じるテイクだからこそ、誰よりも先に分かった。  0時――謎の閃光――この湖底基地の場所が割れた事――全てが指し示す事実。 「……今晩の侵入者騒ぎは予兆に過ぎなかった!  この基地の座標を暴く事で、新たな審判の担当者が――総攻撃を仕掛けてくる!!」 ―――  4月23日 0:07 ―――  事件は会議室でも起こっていた。 「ぐあっっ!!」 「ティアさんっ!!?」  ティア、ノア、ベイト、ミュラがいる大会議室の隅から、突如として光の矢が出現。  ミュラは咄嗟に屈んで避ける事が出来たものの、その閃光が運悪くティアの胸部に衝突し破裂した。  ティアは椅子ごと吹き飛ばされ、壁に頭を打つ。  ノアとベイトは傍らに置いていた武器を取り、臨戦態勢を取る。  ミュラはティアに駆け寄り、右胸を穿たれたティアの怪我を見た。  ティアは何か言いたそうにしているが、吸気が難しく口をパクパクしている。  肺を負傷したようだ。 「花蓮ちゃんを呼んできます!」  ミュラは扉を蹴るように飛び出し、隣の小会議室に待機している花蓮を呼びに行った。  ノアとベイトは室内に充満する殺気を感じ取り、背中合わせのまま言葉を交わし合う。 「これ……審判か?」 「かもな。0時になった瞬間のこれだ、偶然じゃねぇだろ。……安全だと言い張ってたあの野郎がこのザマだ。」  ベイトは皮肉げに倒れているティアを見る。 「こいつはトリードの審判とは違うな。……正体が分からねぇ。油断すんなよ。」 「ああ。背中は預けた。」  警戒する2人の前に、何処からともなく閃光が出現する。  しかしその軌道は予測するものと違っていた。  ドドドドドド……  壁や床や天井を叩きながら軽快なリズムを刻み、閃光が跳ねる。  まるでゴム製のスーパーボールを密室で思いっ切り壁に投げつけたかのような、そんな反射をしながら。  殺傷力のある閃光が、会議室内を縦横無尽に駆け回っている! 「なんだ、これ……!」  ノアが剣を振り、閃光を叩く。  しかし謎のエネルギー体である閃光は、剣の峰で反射し、更にスピードを乗せて床を跳ね回った! 「しゃあねえ、これでも食らえ!」  ベイトは天井に向けて、力任せにボウガンの矢を放った。  矢に仕掛けられていた火薬は衝突と共に爆破し、煙と塵を散らす。  そこに閃光が飛び込めば、速度を相殺できるのではないか……。  ベイトのその目論見は間違いでは無かった。しかし閃光は不気味な軌道を描いて爆炎を貫き、ベイトの手元に飛び込んできた。  手を貫かれた勢い余り、ベイトは改造ボウガンを取り落とす。  そして閃光は血飛沫を纏ったまま、ノアの首へと伸びる!  ノアは上体を捻り、間一髪直撃を避け、鎖骨付近を掠る程度のダメージに押さえた。  そして閃光が床に衝突して掻き消えるまで、2人の悲鳴が上がるまでの出来事だった。 「ちぃっ!」 「ぐっ!」  パラパラと壊れた天井の一部が剥がれ落ちる中、室内に飛び込む人物がいた。  ノアとベイトは、ミュラが花蓮を連れて戻ってきたのかと思ったが、それは違っていた。  漸がリリトットを伴い、銃を構えながら駆け付けたのだ。 「なんだこの有様は……無事か!」  大会議室の荒れ様を見て漸は叫ぶ。続けるようにしてリリトットが甲高い声で呼んだ。 「花蓮! どこ、花蓮!?」 「花蓮ちゃんなら隣の部屋だ! 何しに来た、こんな時に!」 「ケガしてる人がたくさんいるのっ! 今、ネコがみんな連れてくるから、花蓮を早く!」 「何だと!?」  再びの緊急事態。どうやら、同じことが基地全体で起こっているらしい。  指示を出す役のティアは肺を負傷し倒れている。今、優先的に何を片付けたらいいのかの判断が遅れれば、致命的だ! 「怪我人は一箇所に集めろ! 動けるヤツは怪我人を守れ!」  取り急ぎベイトが大声で指示を出す。  ノアはティアを担ぎ、ベイトと共に会議室の外に出た。  花蓮は何をしているのだろうか。到着が遅すぎる……!  通路を少し走ると、その理由が分かった。  小会議室前の通路で、花蓮は必死に倒れている人物の止血作業をしていた! 「スレインっ! スレイン、しっかりして!!」  倒れている男はスレイン。リスナが彼の手を取りながら、泣き叫んでいた。  スレインは胸だけでなく、腹、足など至るところに穴が空き、絶望的な程出血をしていた。  花蓮は額に汗を掻き、休むことなく傷口を縫い続ける。  麻酔などしている暇は無いのだろう。スレインはガクガクと全身を痙攣させ、必死で痛みと戦っている。 「おい、何が起こってる!? 教えろ!」  ベイトはイライラと問いただす。  リスナは震える両手でスレインの手を握り、辛い瞬間の記憶を思い出すように語る。 「光が飛んできて、私とエガルさんを襲ってきて、ス、スレインが……ううっ!  光に貫かれて、階段から落ちたんです!! どうして、こんな……!」 「……くっ!」  ベイトは、花蓮の治療の様子を見て悟る。……花蓮がこれだけ本気になっても無理なら、スレインはもう、助からない。  他にも負傷者はいる。しかし、まさか花蓮に、スレインを放っとけと言う訳にもいかない……。 「エガルは何処だ? アイツも治療士なんだろ!?」 「エガルさんは、上に……他の負傷者の治療に向かいました!」  その時スレインが激しく吐血し、リスナは悲痛な叫びを上げる。  どうやらエガルは既に他の負傷者の元へ向かったらしい。 「……ベイトさん。」  ミュラが目で訴えてくる。……ここは私達に任せてくれ、と。  ミュラは、ノアの背からティアを下ろし、床に寝せる。出来る範囲で応急処置を始めるようだ。 「分かった。……行くぞ!」  ベイトはノアに目配せをし、2人で上へ向かった。  とうとう、スレインは痙攣すら弱々しくなる。  花蓮は返り血にも気にせずに黙々と止血をするが、スレインの出血量は既に限界を超えていた。  それに、階段から落下した際に頭も打ったのだろう。意識が混濁し、挙動もおかしくなっていた。  その様子を、ミュラ、リスナ、漸、リリトットは見守る。  ティアの肺の止血をしつつ、新たな閃光の襲来に気を配りながら。  スレインに比べるとティアの肺の傷は到底軽い。何度か吐血はしたようだが、死に関わる程には至らなかった。  ミュラの止血の腕もそこそこ上がっていたのだ。暇な時に花蓮から手解きを受けていたのが功を奏したらしい。  突然、漸がリリトットを突き飛ばした。  ドスッ!  なんとその1秒後、リリトットの居た場所に閃光が飛来したのだ。 「あ、ありがとー。」 「ごめんな、突き飛ばして。」  再び漸とリリトットはくっつき合う。  そして警戒を強める。新しい閃光が出現し、反射を始めたのだから。  閃光はリリトットの居た位置を離れると、壁を反射しながら通路の奥へと消えていった。  基地の構造を考えると――すぐにまた、こちらへ跳ね返ってくるだろう。 「花蓮ちゃん、気をつけて!」  ミュラは花蓮に注意を促す。しかし花蓮はそれどころではない。 「……スレインさん、もう少し、もう少しだから……私が、助けるから……!」  ここは治療士にとって退けない現場。花蓮がコンマ1秒でも止血を遅らせたら、スレインの命は失われるかもしれない。  ミュラは覚悟を決めた。弓は自室に置いて来てしまっていた。最悪の場合、身体を張って閃光を受け止める。  通路の奥がチカリと光った。……来る!  床、壁、天井。ジグザクと回りながら飛来する凶悪な閃光。  刹那の一瞬――ミュラは花蓮とスレインの前を覆うように飛び込んだ。  すると、どうだろう。閃光は不気味なカーブを描き……ミュラの股下へと潜り込む。  まるで閃光自体に意志があるのではないかと疑ってしまう程に、ミュラの身体のガードを――擦り抜けた! 「しまった……花蓮ちゃん!」  閃光は花蓮のこめかみ目掛けて飛ぶ。  ヒットは免れないかと思ったその瞬間、リリトットが花蓮の服の裾を引っ張り、花蓮を横に転ばせた。  ドシャッ!  閃光は天井のパネルを壊し、消滅した。  間一髪、リリトットの機転のおかげで、花蓮は前髪が焼き切れる程度で済んだ。  しかし―― 「スレインさん……っ!! あ、ああ……っ!」  花蓮はスレインに縋り付く。  スレインは既に息をしておらず、花蓮は最後の手段として心臓マッサージを行なう。  たった一瞬だった。一瞬だけ処置が遅れただけで、スレインはもう手の届かない死の淵まで遠ざかっていた。  短くない時間が過ぎ、やがて、花蓮は心臓を押す手を止める。  治療士が傷病者から手を引く時。それは、もう手遅れである時。  エガルの助手を務めた事のあるリスナにはそれが分かる。項垂れる花蓮を見て、リスナは静かに泣いた。  スレインの手を、冷たくなるまで離さずに……。 「……ごめん、なさい。」  リリトットが頭を下げた。花蓮を引っ張った事を気にしているのだ。  しかし、ああしなければ花蓮の命も今頃無かっただろう。花蓮は感謝し、リリトットの頭を撫でる。  そして、ミュラも。  身を挺しても閃光を防ぐ事ができなかった。その責任はミュラにある。  場に佇む全員が、リスナのすすり泣く声を聞きながら呆然としていた……。 ―――  ノアとベイトが非常階段を上ってきた時、通路を光が走るのが見えた。  それは間違いなく、この惨状を引き起こしたもの……!  この閉じられた地下空間にどうやってか入り込み、次々とレジスタンスの面々を食らう悪魔。  既に何本目だろう。終わりはいつ訪れるのか……。その考えこそが甘えなのか。  鉄壁のはずの湖底基地に侵入者が現れた。  そして審判の魔術を基地内に放つ事ができる近衛兵。  ……ゴッディアが本気を出せば、この湖底基地はあっという間に壊滅するという事だ。  ならばもう此処は安息の場では無い。  外と変わらぬ、常に死と隣り合わせの危険地帯だ……!  ノアとベイトが通路の角を曲がる。  そこにはエガル、ネコ、斬燕と、深手を負って倒れているテイク、ホーエー、ピーターが居た。  エガルは意識を失っているピーターの左腕を、何とか繋ぎとめようと処置を行なっている。  左腕は肩から下が激しく損壊し、神経が繋がっているかどうか分からない絶望的な状態だった。  当然、激しく激しく出血しており、このままではピーターの命すら危うい。  通路が嫌に明るくなる。  頭上を見上げると、天井付近に蛇状の閃光が、くるくると獲物を探すように旋回をしている。  まるで本当に生きているかのように不気味な挙動で、壁にぶつかっては跳ね返り、場に居る全員を燻り続ける。  テイクが十字架をブーメランのように投げ、閃光を追う。  しかし閃光はひょろひょろと捩れ、くねり、攻撃をものともしない。  ノアが剣を構えて一歩を踏み出そうとした瞬間、閃光は殺意を剥き出しにした。  通路内の壁、床、ありとあらゆる障害物に反射し――今一度、命を食らわんと襲い掛かる!  満ちる絶叫と悲鳴。  閃光は一度、しゃがみ込んで治療を行っていたエガルの背に突き刺さる。  そしてエガルが倒れると同時に再び天井に昇り、跳ね返り、一直線にネコを貫きに降りて来る!  ガキィン!  ……という、けたたましい破裂音の後、静寂が訪れる。  閃光は掻き消えていた。ピーターが周囲に展開した、バリアスペルによって。 「……はぁ、……は……ぁ……っ 」 「ピーター? おい、大丈夫か!?」  この土壇場、エガルの治療の手が絶たれた瞬間、ピーターの意識は覚醒していた。  そして反射的に使ったバリアスペルの能力が、この惨劇に……終止符を打った。  ベイトが駆け寄った時、ピーターの目は虚ろで息も絶え絶えだった。  やはり限界だったのだろう。再び、ピーターは無意識の世界へと落ちていった。  そしてエガルも負傷した事により、すぐにピーターの腕を治療できる者はいなくなってしまった。 「……駄目だ、これは……花蓮を呼ばないと。」 「僕が運ぶ。場所はどこ?」  ネコが魔術でピーターの身体を軽々と持ち上げる。  このまま花蓮の元へ連れて行くのが早いが、空中には閃光がいつ飛んでくるか分からない。  だからベイトは警戒を怠らず、階段へ向かって慎重に進んでゆく。  ……彼らには知る由も無いが、先程ピーターの決死の防御が防いだ閃光で、合計9本だった。  つまりデュオが放った今夜の審判はこれで終了。  また一つ、貴重な命が失われ……血の惨劇に怯えながら、新たに到来した一日が始まるのだった。 ―――  4月23日 1:20 ―――  作業中のアサメ以外の全員が小会議室に集められ、怪我の治療が行われた。  スレインの亡骸はノクスと同じく個室の一つに安置され、テイクによって冥福の祈りを捧げられた。  幸いにも花蓮が小会議室を診療所のように整えていた御陰で、治療は比較的スムーズに進んだ。  ピーターの左腕は形だけくっつけてあるものの、再び動かせるようになる可能性は絶望的だった。  当の本人はあれから意識を覚まさず、室内で静かに眠っている。彼の持ち物である盾と共に……。  これでこの騒動は終わり、皆不安な気持ちを抱えたまま一夜を過ごす……だろうと思われたが、そう穏健に行くことは無かった。  沈んだ空気が漂う室内を掻き乱す、男の怒声が響く。 「……アンタが、そうなんだろう?」  その男――漸は、目の前の人物に向かって片手で拳銃を突き付け、もう片方の手でリリトットを抱き寄せる。  リリトットも、漸に相対する人物を見て怯えた表情を向ける。 「オレとリリは見てたぞ。……アンタを狙った閃光が、不自然に曲がるのを。そうだろ?」 「う、うん。リリ見てたもん。……おかしいよ。」  2人は嫌疑をかける。先程の審判の一件で、何かに気付いたらしい。  2人の正面で、漸に銃を向けられ……動揺する、少女。 「待って下さい。……何言ってるか、分かりませんよ。」  それは、ミュラ。  彼女が疑われているのだ。“裏切り者”として。 「さっきの危ない光がゴッディアの仕業なら……何故アンタを避けて花蓮さんを狙ったんだ?  あれは不自然過ぎる動きだった、アンタを狙わないようになってたんじゃないのか?」 「違います、私にも何がなんだか……。」 「あれさえなければ、スレインは死ななかった。そうだろ? リスナ!」  漸はミュラを睨んだまま、リスナの名を呼ぶ。  部屋の隅で涙を拭っていた彼女はビクリとする。そして、ミュラと漸の顔を見比べた。  リリトットは漸の服にしがみ付き、泣きそうな顔でミュラの動揺する目を見つめる。 「ミュラ……嘘だったの? 今までの、ぜんぶ……。」 「違いますよ、リリちゃん、信じて……!」  端から見て痛々しげに弁明するミュラ。  実際、ミュラには見に覚えの無い事でも、否定する材料が無い。  間も無く、ミュラと漸の間にベイトが割り込んできた。  そして漸の拳銃の銃口を握り、厳しい口調で怒鳴る。 「そいつを下げろ、漸。ミュラちゃんを疑う事は、俺が許可しねぇ。」  そしてミュラの肩にノアが手を添える。2人はミュラの潔白を信じているのだ。  漸は一瞬引き下がろうとするが、前髪を払って踏みとどまる。  そしてリリトットを一層強く抱き寄せ、ベイトに負けじと言い返した。 「……ミュラがゴッディアと通じてないって証拠、アンタ達に示せるのかよ?  アンタ達はレジスタンスとして、そいつと仲間だったかもしれない。でもオレ達は難民だ。  仲間としての絆に縋り付いてまで、疑わしいヤツの味方なんかできない!」  漸は銃を、銃口を押さえているベイトの手を振り払うように引っ込める。 「アンタらさ、根拠も無しに人を信じるってどういうことか、よく考えてみろよ。  本当にそいつが裏切り者だったら、オレらは皆犠牲になっちまうんだぞ。アンタらの感情のせいで!  その子が好きなんだか守りたいんだか知らないけど、オレとリリは信じられねぇ。……他にもいるだろ!?」  漸の言葉が、会議室中に響く。  身体の節々を負傷した面々が、各々の想いを抱く。 「遠慮するなよ。こいつらの勝手な感情論に付き合わされて、命を蔑ろにする必要は無いんだ!  ミュラ、ノア、ベイト。この3人こそが信じられないって人は、オレと来い!  裏切り者と一緒に居る必要は無い、部屋を移すぞ!」  漸はリリトットを連れて、外へのドアへ向かって歩く。  ベイトはイライラしながら漸を引き止める。 「待てよ、勝手な事ほざいてんじゃねぇ! てめぇこそ、ミュラが裏切り者だと決め付けやがって!  おい、聞いてんのか!」  しかしいくら叫んだところで漸は引き返さない。返って来た声色は、冷たかった。 「……アンタらがその子を信じるのは勝手だ。オレもリリを死ぬほど信じてる。  だから、同じ部屋には居れないね。リリを守る為なら、何だってするさ。」 「勝手な事ばっかり言いやがって……前々から気に要らねぇと思ってたとこだがよ。  状況は危険だ、テメェらだけでどうするつもりだ! おい、ティア! てめぇも何とか言え! てめぇリーダーだろ!!」  ベイトは暴れるように、肺を負傷したティアにも食って掛かる。  ティアは頭を掻いて立ち上がり、まだ呼吸が苦しいのだろう、弱々しい声で意見を示す。  しかしそれは、ベイトが予想しえないものだった。 「……俺もミュラちゃんを信じてやりたいとこだけど。……ノクスにスレイン。もう、湖畔の同士が2人もやられてるんだ。  俺としてもこれ以上、犠牲を出したくない。……だから……ゴホッ、ゴホッ……だ。」 「あ……? 何言ってんだ、テメェ?」  咳に紛れて聞き取れなかった最後の言葉を、ベイトは聞き返す。  ティアは――かつてなく真面目で、冷酷な口調で、言った。 「…………お前達と協力するのは、一旦中止だって、言ったんだ。」 「な……に……!?」  ティアは漸に続く。湖底基地のリーダー自身が――仲間割れを、肯定した。  漸はベイトに向き直り、まるで勝ち誇ったような、ありえない笑顔を、剥く。 「……良かったじゃないか。アンタ、オレを疑ってたんだろ?  アンタが睨んでた裏切り者の男と、離れられるんだぞ? 喜びなよ……。」 「何だと……て、てめぇ……?」  ベイトは衝撃を受ける。ベイトが漸を疑っていた事は事実――だが、それはベイトとミュラの、2人だけの秘密だったのに!!  ベイトはミュラの顔を見た。ミュラも、怯えきった目でベイトの顔を見る。  それを見て、漸は高く笑った。 「今、疑ったな? アンタが信じるって言ったミュラを疑ったな。……やっぱりその程度じゃないか。  オレに分からないとでも思ったのか。ベイト。……アンタ、オレを見る時だけ、視線がキツくなってるんだよ。  感情を上手く隠せないくせに無理すんなよ!」  漸とベイトの確執が表沙汰になり、もう2人は止まらない。  漸は追撃するように、ベイトを挑発する。 「最下層に巣食っている侵入者……オレ達共通の敵だよな。あれがいるせいで、オレ達の持つ物資は限られてる。  だからこれは勝負だ。……先に侵入者を追い払った方が、保管庫の物資を独り占めできるってのは?」 「おい、何考えてんだテメェ……ふざけんのもいい加減にしろよ!!」 「ベ、ベイトさん、落ち着いて……!」  ベイトは完全に頭に血が上り、漸の胸倉を掴み掛かりに行く。  ミュラやノアが慌てて止めるが、もうここまで来たらどうする事もできない。 「信じた女を守るんだろ? 本気でやれよ。今度オレがミュラと会ったら……容赦なく、ブチ抜くからな。」  漸はミュラの眉間を指さし、最後の挑発をする。  ベイトも勢いで、それに応えた。 「……クソが。死にてぇなら死にに行きやがれ! 戻って来やがったら、俺がてめぇをぶっ殺してやる!!」  その一言で――レジスタンスは、完全に真っ二つになった。 「上等だよ。……裏切り者の正体が分かって、両方が生きてたら。その時に仲良くしような。  ……行こうか、ティアさん。」 「……ああ。すまないな、ミュラちゃん。ノアも、ベイトも。……生き残ってくれよ。」  漸はリリトットを傍らに寄せ、会議室を出て行った。  それに続き、申し訳無さそうにティアも出る。  そうなると勿論、エガルとリスナも彼に続く……。  そして、ホーエーが悩んでいた。部屋の出口とミュラ、ベイトの顔を順番に見て……部屋の出口へと、歩いていく。 「……ごめん。漸を説得して、戻ってくるから……。」  そう言い残し、ホーエーも去った。  深夜の大会議室には、ミュラ、ベイト。  そしてミュラを信じるノア、花蓮、ネコとクルミ、斬燕、テイク。意識が未だ戻らないピーターが残った。  騒ぎの後には、虚しい空気が流れ続ける……。  ミュラは、室内に残ってくれた仲間一人一人に頭を下げて回った。  この騒動の原因が彼女自らにあるという、責任を感じているらしい。 「元々ゴッディアに協力していた私を、貴女は信じてくれました。……だから私も信じます、貴女の事を。」  テイクはこう言い、逆に頭を下げた。 「僕はどっちでもいいっていうかー……興味無かったんだけど、クルミがさっきからにゃーにゃーうるさくてさ。」  ネコはぶっきらぼうにそう言い、冷めたポーズを取る。  クルミは背中の怪我を治療してもらった後、ネコと交代してゆっくり休んでいるらしい。  一体化状態の2人は、表に出ない間は身体の治りが早いのだと言う。  謝罪を続けるミュラに、ベイトが声をかける。  ミュラはベイトに対してもまた謝ろうとすると、ベイトはミュラの頭に手を置く。  叩くわけでもない、撫でるわけでもない、微妙なタッチだった。 「潔白ならしゃんとしてろって。俺達が自分で信じると決めたんだ。  ミュラちゃんが嫌がっても守ってやるからな、その覚悟をしろよ。」 「…………ベイトさん。」  ミュラはベイトに顔を向けられない。  思えば、ずっと世話になりっぱなしで、本当に情けない。  これ以上一緒にいると……本当に甘えてしまいたくなってしまう。 「……ありがとう、ございます。」 「ま、こりゃもうほとんど俺の問題だしな。……カッとなって悪かった。漸とのケリは、俺が付けるよ。」 「いえ、その……、……。」 「何?」 「……嬉しかった、です。」  静まり返った湖底基地。血飛沫が彩った4月23日のはじまり。  湖底基地は外と変わらぬ危険地帯となり、レジスタンスは信じる者の違いで二つに分かれてしまった。  これから一体どうなって行くのか、誰にも先は分からない。  答えが無いからこそ、精一杯生きるしか無いのだ。  自らが信じる道を真っ直ぐに。時には、道を違えた者を犠牲にして。  その道が、何処かで再び交わる事を祈りつつ――。  第39話へ続く